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飲食店経営は、一見華やかに見えますが、数百円単位の小取引の中で儲けを生み出していくためには、細かいロスや数十円単価の原価計算の積み上げが必要不可欠です。
このコラムでは、「飲食店店舗採算試案表」作成を目標に、数字から見る飲食店経営についてご説明します。
是非しっかりとした経営のために、「儲けの方程式」をご活用ください。
自分の店をオープンする前は、あれこれと成功の予測を立てるものです。いわゆる「捕らぬ狸の皮算用」です。まずは「利益」について考えて見ましょう。
飲食店の儲けは、他の産業と比べどのような特徴があるのでしょうか?
飲食業は、「人によって作られた料理を人が提供する商い」である以上、食材費(フード)と人件費(レイバー)が重要な要素を持っており、一般的にこの二つを合算したものをFL値といいます。
経費削減のポイントである固定費について考えます。
儲けるためには、売上目標を立て、計画的な経費管理が必要不可欠です。今回は、儲けの原点である売上について解説します。
計画的な経費管理・売上管理をチェックする試算表についての説明します。
自分の店をオープンする前は、あれこれと成功の予測を立てるものです。いわゆる「捕らぬ狸の皮算用」です。
しかし、いざ、お店をオープンして数ヶ月経つと、ほとんどのオーナーが発する言葉は、「売上が足りない」「メニュー作りに苦労している」「どんぶり勘定から脱したい」の三つです。
この「儲けの方程式」で、基本的な計数を元に、儲かるための法則を一緒に作り出していきましょう。
儲けるとは、利益を上げることを意味します。そして、利益とは、利益(儲け)=売上-経費であり、従って、儲けるためには、「売上を上げる」か、または「経費を下げる」かの道しかありません。
※但し、売上を上げるために、売上以上に経費が掛かったり、経費を下げたために、売上が下がってしまっては、全く意味がありません。
販売促進活動が重要な要素を持っています。販売促進活動 には、チラシの配布、戦略メニュー、POP、またサジェッショントークや口コミなど、様々な手法があります。
経費を下げるには、経費そのものを理解し、適正経費を算出しなければなりません。
経費は、固定費と変動費に大きく分かれます。
売上に左右されず、お店を維持していくために固定的に必要となる経費(家賃・設備投資の返済、店長など固定的に支給すべき給与など)が含まれます。
売上の変動により、左右させることが出来る可能性のある経費(食材費・パート・アルバイト等の人件費、水道光熱費、販売促進費)等、変動可能な経費を意味します。
右の図は、売上と経費との関係を示したものです。
経費には、固定費と変動費があり、変動費は売上の上昇により、増加し、(A)時点を越えた時点で利益(儲け)が発生してきます。
この時点を「損益分岐点」といい、お店の計数管理で最も重要なポイントです。おさえておきましょう。
飲食店の儲けは、他の産業と比べどのような特徴があるのでしょうか。商社との比較事例でご紹介します。
一商談当りの単価を50万円、利益率10%ととして、100万円÷10%÷50万円=20回の商談成立が必要となります。
一人当りの客単価を3,000円、利益率10%ととして、100万円÷10%÷3,000円=約3,333回の来店が必要となります。
図-商社と飲食店の利益の組み方
つまり、飲食店は、基本的に小額の取引の繰り返しであり、それぞれの経費を正確に把握すると共に計画的に活用することが儲けるために最も重要な要素となってきます。
小額取引の繰返しで儲けるためには、ちょっとしたロスを軽減していくことが重要です。下図は、飲食業における大まかな経費の枠組みとロスのチェックポイントを示したものです。
図-経費の枠組みとロスのチェックポイント
このように取引額が他の産業に比べ低く、労働力に頼り、また、商材も鮮度が要求される可能性の高い産業は、細かい経費計算や地道な経費節減、そしてその分析をし、計画的に経営を行うことにより、より多くの利益を確保することができます。
特に売上により変動する変動費の管理、その中でもFL値と呼ばれる人件費と食材費の管理は、飲食業の利益に大きく関わりあうものです。
飲食業は、「人によって作られた料理を人が提供する商い」である以上、食材費(フード)と人件費(レイバー)が重要な要素を持っており、一般的にこの二つを合算したものをFL値といいます。
飲食店の場合は、FL値60%を水準に上下するのが、一般的です。
FL値は、経費分類の変動費であり、したがってこの中にある人件費には、オーナーの人件費及び本部経費は、固定費に計上するのが一般的です。
低価格チェーン店は、下表に示すように一般的に価格を抑えるためにセントラルキッチンを設置し、食材の低価格化を図ると共に、徹底したマニュアル化により、人件費の低減を図ります。
図-低価格チェーン店のFL比率
鮮度を必要とする食材を使用するチェーン店等は、食材の割合を増やす分、ホールのサービスにかかる人件費を低減するなど、FL値の高騰を防ぐ工夫がされています。
図-海鮮居酒屋チェーン店のFL比率
下表は、食を提供する職種の一般的なFL値を示したものです。
ご覧のように日本料理に比べ、イタリアン料理は食材費が低く、カラオケBOX等は、設備投資が主となり、FL値が低く抑えられています。
図-「食」を提供する業種のFL比率
つまり、飲食店は、基本的に小額の取引の繰り返しであり、それぞれの経費を正確に把握すると共に計画的に活用することが、儲けるために最も重要な要素となってきます。
このように飲食店にとってFL値は、売上の50%以上を占める経費である上に、お店の努力により、変動することができる経費(変動費)であることから、儲けを算出する最も重要な指数といわれております。
自店のFL値を正確に把握し、それを計画的に支出し、自店の儲けにつなげましょう。
しかし、FL値に代表される変動費は、日々の努力により変化しますが、初期投資や固定費が適正でないと、日々の努力も儲けには繋がりません。また、固定費は一度決定すると、年に1~2度しか見直しができない経費です。しっかりと見直しましょう。
固定費は、下図に示すように、高いと日々の努力もなかなか利益に結びつけることができません。しかし、お客様に来店していただく事業ですから、立地や内装等重要な要素ですので、正確に把握し、計画的に組み立てる必要があります。
図-固定費と利益との関係
固定費には次のものが上げられ、それぞれに対する対策を列記しています。
目安として、売上の3日分、また、売上の10%に抑えることが理想的とされていますが、最近の傾向として、立地を優先させ、この比率を上げているお店もあります。
対策として悪い立地でも販売促進により、向上させることもできますので、全体の計画の中で正確に把握し、売上実績と共に年に一度は、貸主に交渉しましょう。
内装・設備は、客層・客単価・見込み客数により、大きく変化します。そして一般的に客数重視は、オペレーション、客単価重視は、内装グレードを考慮しますが、信頼と実績、そして保守管理など考慮し、飲食の専門業者に依頼します。そして、借入の際も、期間やその方法をよく検討すると共に、無理のない様、年に一度は、見直しましょう。そして更に、3年に一度は改装が出来るよう、積み立てておくことも重要な要素です。
お店の売上を左右する重要な要素です。
一般的に販売促進費を変動費に入れる傾向がありますが、客数が多い時は、それをリピートにつなげる、そして客数が少ないときは新規獲得、その他客単価UPや周年記念など計画的な活用が不可欠です。
対策として年間計画に固定費として組み込み、お店の状態にあった販売促進をいつでも打てるようにしておくことが重要です。
この経費を利益の中に入れ込み、インセンティブを得ようとするケースがありますが、安定した運営を考慮すると、半分を固定費とし、半分を変動費に替えるなど、オーナーの経営姿勢により、変化する経費です。
一般的には、10%程度を目安に計画を立て、調整します。
お店の状態に合わせ、経費を節減できるよう、基本的には、固定費を変動費化する努力がされますが、無理に変動費化しても、結局計数が見えにくくするばかりというケースもあります。ここでも正確な計数の把握と計画性が重要となります。
儲けるためには、売上目標を立て、計画的な経費管理が必要不可欠です。今回は、儲けの原点である売上について解説します。
売上=お客様数×客単価×稼働日数(1ヶ月-休日)であり、
従って、売上を上げるためには、
「客数、客単価、稼働日数のいずれかを上げる」しか、道はない。
席数:25席 ランチタイム:1回転 夜:2回転の場合、
通常は、4人席を2人で使用する場合も多いことから、0.7をかける。
つまり「25×(1+2)×0.7=52.5人」となる。
時間帯 | フード売上 | 飲み物 | デザート | 来店数 |
---|---|---|---|---|
ランチ | 11,000円 | 2,600円 | 0円 | 17人 |
ディナー | 72,000円 | 28,000円 | 5,000円 | 35人 |
上記の各項目を踏まえた上で、売上目標を仮説の設定します。
上記の事例を総合すると
想定される一ヶ月の目標売上は、
(14,000円+105,000円)×24日=2,856,000円
下記の表は、ある飲食店の売上及び経費に対する試算表です。
図-採算試算表(事例研究)
この表は、あくまでも損益分岐点(「儲けるとは」にて解説)を100%達成として試算されたものです。
従って売上がこの数字以上に上がった場合に、初めて利益が出たことを意味します。是非ご自分のお店の採算試案表を作ってみてください。
そして、何回か作り直し、納得のいくように総売上と損益分岐点が一致し、それ以上の売上の見込みがあって運営が可能となります。
また、スタッフと、認識を統一しておくことも重要な要素です。一緒になって試算してください。
飲食店経営は、一見華やかに見えますが、数百円単位の小取引の中で儲けを生み出していくためには、細かいロスや数十円単価の原価計算の積み上げが必要不可欠です。その一方で人が大きく関わりあう職種だけにスタッフの協力も重要です。
最終回の「飲食店店舗採算試案表」を裏づけのある数字で、スタッフと共に作り上げれば、相乗効果も生まれます。そして、もうどんぶり勘定ではありません。
銀行からの融資もこのような試算表を提示することにより、有利となると共に、完成した試算表の予算で、下図のような「儲けるためのロジック」を回しながら成長していくことが安定経営への第一歩です。
図-儲けるためのロジック
是非しっかりとした経営のために、「儲けの方程式」をご活用ください。